アレモ コレモ ヨミタイ

読んだ本のことを書いたり書かなかったり

存在の耐えられない軽さ / ミラン・クンデラ著 ; 千野栄一訳

 最近聴いているポッドキャスト番組「読書のちょめちょめ」のパーソナリティー「お兄さん」に影響されて、本とはなるべく関係のないことを書く、という前提からは外れて、本の紹介に挑んでみようと思う。

 原著は1984年刊、今回読んだ文庫版の奥付にある刊年は1998年なので、けっこう前の本である。最近話題になったので手に取ったはず、なのだが、なぜ話題になっていたのか、思い出せない。ググってみたけれどわからない…と、映画にもなっていることが判明。しかし1988年公開なので、最近の話題になる理由とは考えにくい。とすると文庫化を機に、再度注目を浴びたというぐらいしか想像がつかない。

 文庫カバーにある説明文には恋愛小説とあるが、この作品は、小説の数あるジャンルの中のひとつにカテゴライズするのは不可能なのではないかと感じた。配偶者やパートナーという男女の関係を軸に、当時、おそらく1960〜70年代だろうか、のチェコスロバキアにおける社会情勢を描き出すとともに、人間にとどまらず生命の存在そのものに対する考察という視点に迫っている。小説という枠に押し込めることにさえ、違和感を感じるほどの作品だ。

 多岐にわたるモチーフが有機的につながり、ひとつの表現として収束していく様に、大変に心を動かされた。著者の出身国チェコでは未刊とのことだが、そうした作品がこの日本や他の国々で言語やメディアを変態させて拡散しているということに、不思議な巡り合わせを感じるとともに感動を覚えた。芸は人なり、というが、書物も人なり、か。