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ヒトは「いじめ」をやめられない / 中野信子

 いじめの起こるメカニズム、さらにいじめの起こる背景、そして回避策までを、主として脳の働きという視点から解説している。我々はふだん感情的な視点からのみで物事を捉えて、事象そのものを考慮することを忘れてしまいがちだが、むしろ感情をコントロールし、現実に何が起こっているのかを観察し分析することの大切さを痛感した。

 また、第4章の第2節の中で述べられる「ザ・サードウェーブ実験」では、人々が一人のリーダーの元に集団化すると、個人では判断できるレベルの善悪の区別さえもできなくなり、いかに理不尽な行動をしてしまうのかという事例が示されているが、これは、現在の社会情勢や、組織で頻発する理不尽な事象や不祥事の数々に結びつけて考えることができるのではないだろうか。

 いじめという問題を足がかりに、今起こっている種々の問題に取り組むヒントをくれる一冊である。