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サリン : それぞれの証 / 木村晋介

 2018年7月6日、オウム真理教の教祖であった麻原彰晃こと松本智津夫ら7人の死刑が執行され、残る6人は2018年7月26日に死刑執行された。13人の死者、6,300人の負傷者を出し、未だに後遺症に苦しむ人もいる大惨事であり、また松本サリン事件とそれ以前の3件のサリン事件の存在、これらに対する当時の警察の初動にも疑問が持たれている事件であることから、このタイミングで死刑を執行してしまって本当によかったのかとの思いが拭いきれない。

 7月6日の執行は国会会期を延長しての最中で、会期中の執行は異例との報道もあった。さらに政権への批判も高まっているなかでの執行であり、また前夜の自民亭宴会の様子が画像で流出するなどしており、多くのよからぬ憶測を呼ぶタイミングとなったことは否めないであろう。

 オウム真理教に関連する宗教団体は、未だ複数存在しており、相当の資産を保有しているという。被害者へのケアも民間団体などによって継続されている。たとえ実行犯を死刑にしたとしても痛ましい事実は終わらないのだということを、この書籍は示しているのではないだろうか。