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輿論と世論 : 日本的民意の系譜学 / 佐藤卓己

 2018年6月25日の日本経済新聞朝刊の1面記事で「内閣支持10ポイント上昇」とあり、安倍内閣の支持率は52%ということになっているが、毎日新聞では5ポイント増の36%となっている。あまりにも開きがありすぎるので、もう少し見てみることに。日経の調査*1は、乱数番号(RDD方式)により990件の回答を得、回答率は47.2%とのこと。一方の毎日はというと、コンピューターで無作為に数字を組み合わせて作った固定電話と携帯電話の番号に調査員が電話をかけるRDS方式により、固定電話では518人の回答(回答率64%)、携帯電話では514人の回答(回答率80%)を得たとのこと*2

 さらに調べてみると、調査の際の選択肢の設定が日経は支持するかしないかの2択であるのに対し、毎日はこれに加えて関心がないという項目があるため*3とする記事に加えて、どちらともいえない・わからないとする答えがわずか6%であるということを強調する記事*4がある。

 そもそも各社でやり方が違う調査なのであれば、結果に各社の相違のあるのは当然であるのだから、「我社の結果が他社と違ってるのはこういうワケなんでして」といった余計な説明を加える方が、かえって怪しいという感情をいだかせるんではないだろうかというのが、この件にに関する私の率直な感想だ。

 本書「輿論と世論」では、世の中の「意見」であるところの「輿論(よろん)」と「気分」であるところの「世論(せろん)」がいかにして曖昧に統合され、混乱を招いているのかということを、戦後日本の政治史を分析することで解き明かしていく。複雑化し、その上で分断されていく社会において、正解を求めることは不可能に近い。二項対立を作り出し、決断を迫ることだけでは、もう解決できない局面にいると思う。どちらが輿論で、どちらが世論なのか。二択の構造を演出しているという点で、おそらくどちらも世論つまり気分であると言えるのではないだろうか。